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『イン・ザ・メガチャーチ』を読んで考えた、ファンダムとWell-beingの関係を考えてみた

『イン・ザ・メガチャーチ』を読んで考えた、ファンダムとWell-beingの関係を考えてみた

Index目次

イン・ザ・メガチャーチ

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』は、50万部を超えるベストセラー作品です。本書が2026年の本屋大賞作品です。私は今年1月に読みましたが、ページをめくる手が止まらず、久しぶりに一気読みしました。

その理由のひとつは、登場人物たちが使う言葉のリアルさです。若い世代の考え方やコミュニティのあり方、SNSやネットを介した人間関係など、断片的に見聞きしていた世界を物語として追体験できました。

50歳を過ぎたおじさんに、現代社会で起きている出来事や若者たちの感覚を、小説という形でわかりやすく教えてもらったような感覚でもありました。

しかし、読み終えたあとには不思議なモヤモヤが残りました。物語に強く引き込まれたにもかかわらず、爽快感よりも問いが残る。その感覚こそが、この作品の魅力なのかもしれません。

ストーリーとコミュニティが生み出す熱狂

本書の大きなテーマは「ファンダム経済」の構造です。

私自身、BeBlockの仕事を通じてコミュニティづくりやファンベースついて考える機会があります。その視点から見ると、本作は人がなぜ熱狂し、なぜ応援し続けるのかを非常にわかりやすく描いているように感じました。

推しやコンテンツが成長するためには、単に優れた商品やサービスがあるだけでは不十分です。そこには共感を呼ぶストーリーが必要です。そして、そのストーリーに惹かれた人たちが集まり、コミュニティが生まれます。

さらに、コミュニティの中で仲間とのつながりが生まれることで、応援する行為そのものに価値が宿ります。推しを応援することは、対象への支持であると同時に、同じ価値観を持つ仲間との関係を育む行為でもあるのです。

人は合理性だけで動くわけではありません。物語に心を動かされ、時に非合理的な言動をしてしまうのです。

熱狂はどのように作られるのか

もうひとつ印象的だったのは、熱狂的なコミュニティは自然発生的に生まれるだけではないという点です。

その裏側には、人々を惹きつけ、参加を促し、継続的な関与を生み出す仕組みを設計するプロデューサーの存在があります。推し活する人、推される側のアイドル、この構図を意図的に創り込む人の三権分立の構造です。

本書で描かれているのは、熱量の低い100万人を集めるよりも、熱量の高い1万人を育てるというプロデューサー側の施策です。数を極端に絞って言えば、熱量そこそこの100人より、熱狂的な1人にスコープを当てるってことです。熱量の高い人を増やしていくことで、熱狂的ファンが生まれるのです。

そして、熱狂的なファン、そこそこ好きな人、そのアイドルを知ってるライトユーザーの3層が構築されていきます。

本書の帯にあるプロジュース側の言葉にある、「神がいないこの国で人を操るには、”物語”を使うのが一番いいんですよ」

これが宗教思想に通じるということで、「メガチャーチ」というタイトルがついているのです。

信徒を増やし、教義への理解を深める仕組みは、そのままファンを増やし、価値観への共感を育てるマーケティングの構造とも重なりますが、危険な香りも漂ってきます。

没入は人を幸せにするのか

人はなぜここまで何かに没入したくなるのかという問いです。

「中毒症状があるほうが人生は苦しくないのだ」というくだりがあります。

推し活は日常に楽しみや潤いを与えてくれます。好きな存在を応援することで前向きになれたり、そのために仕事を頑張ろうと思えたりすることもあります。そうした意味では、人生を豊かにする大切なエネルギー源です。

一方で、別の見方をすれば、コミュニティや推しは人々のお金や時間、そして労力を集める装置としても機能します。本人は楽しんでいるつもりでも、気づけば多くの資源を注ぎ込み、離れられなくなっていることもあります。逆側を見れば、危険なモノとも見ることができます。

その構造は、タバコやお酒といった嗜好品やゲームやSNSにも似ています。適度であれば人生を彩る楽しみになりますが、度を超えれば依存へと変わります。スマホ依存も同様ですね。

ここで重要なのは、自分自身を客観視するメタ認知とバランス感覚なのだと思いました。

Well-beingを考える

『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだあとに残ったモヤモヤは、おそらく「何かを信じること」や「熱狂する」ことへの違和感ではありません。

ストーリーに惹かれ、コミュニティに所属して生きていくことは、Well-beingであるかという問いです。

コミュニティに所属することも、推しを応援することも、本来は人生を豊かにするための手段です。しかし、それが目的化した瞬間に、自分自身の主体性を失い視野狭窄になる危険性もあります。

いつも言っている幸せの4つの因子、①やってみよう ②ありがとう ③なんとかなる ④ありのまま、

これらは、「メガチャーチ内だけ」に限定して話ではなく、仕事、家族、趣味など広義において満たされていくことが重要です。

Well-beingへの考え方は、人それぞれあっていいけれど、視野狭窄になってはならぬ。

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』は、問いを静かに投げかけてくる一冊でした。

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