BeBlock Being

BeBlockの"いま"を届けるWebメディア

「葉っぱを見て、木を見て、森も見る」

「葉っぱを見て、木を見て、森も見る」

Index目次

「物理的な構造なら、仕組みが分からないものはほぼない」

「構造を読み解く力」

人は「手順」を見て、私は「身体の動き」を見る

おわりに:思考を止めず、観察から始めよう

■「物理的な構造なら、仕組みが分からないものはほぼない」

突然ですが、みなさんは「初めて触る機械のトラブル」や「経験のない作業」に直面したとき、どう対応されているでしょうか。

私には、長年の経験と幼少期からの習慣によって培われた、ひとつの大きな「自信」があります。
それは、「基本的な物理構造で動いているものであれば、仕組みが分からないものはない」ということ。
そしてもうひとつが、「人の身体の動きまで観察すれば、初めての作業でも初見で7割くらいのクオリティで再現できる」ということです。

電子基板やプログラミングといった専門知識が必要なブラックボックスは除きます。しかし、私たちが日々のモノづくりで使っている製造機械や、現場で発生する商品の不具合であれば、対象を冷静に観察することで「なぜ今この状態になっているのか」「どうすれば解決できるのか」が、自ずと見えてくるのです。

この観察眼の原点は、前回の記事でお話しした幼少期のキャンプ場での父の教えです。
テントの立て方が分からず教えを請うた私に、父が言い放った「自分で考えなさい」という一言。
答えを教えてもらえない以上、幼い私は自らじっと観察し、仕組みを理解し、仮説を立てて手を動かすしかありませんでした。「誰も教えてくれないなら、自分の目で見抜くしかない」
あの時叩き込まれた行動様式が、大人になった今も対象を深く観察するスタンスへと繋がっています。

今回は、この「観察」の深さと、それが現在の仕事にどう活きているのかについてお話ししたいと思います。

■ 「構造を読み解く力」

この「観察力」が仕事で活きた例をご紹介します。以前、他拠点のメンバーから「ラミネート機械の調子がおかしいので見てほしい」と頼まれたことがありました。
私にとっても、その機械の内部構造を見るのは完全に「初見」です。

確認してみると、内部のチェーンが歯車から外れてしまっている状態でした。修理するためには、歯車が固定されている円柱状の支柱部分を分解して取り外す必要があります。当然、マニュアルもなければ手順も知りません。

そこで私が最初に行ったのは、機械をじっと「冷静に観察すること」でした。

  • 部品の形と動き:どの部品が、どんな役割を担って連動しているか?
  • 構造の共通性:同じようなパーツや、同じ構造になっている箇所はあるか?
  • 構造の成り立ち:どのように組み立てられてるのか?部品の固定は何で行われているか?

観察を続けていくと、「本当は歯車にチェーンがかかっている構造」「チェーンを戻すには一旦歯車を棒から取らないといけない」「この輪っか状のピンは歯車を棒に固定するためのものだ」「こちらの構造と同じだから、バラバラにしても戻し方がわかる」と、パズルを解くように手順が頭の中に浮かび上がってきます。
とても簡単に無事にチェーンを掛け直して修理を完了させることができました。

苦手な方がよく言うのは「壊れたらどうしよう」「戻し方がわからなくなる」です。
構造を見ると壊れないことがわかるし、戻し方も最悪写真を撮っておけば大丈夫。
そんなに恐れる必要はありません。
実際に分解していくとさらに構造が理解できるのです。

■ 人は「手順」を見て、私は「身体の動き」を見る

この観察眼は、機械の構造だけでなく「人の技術(身体作業)」を吸収・再現する際にも役に立ちます。

誰かから新しい手作業や技能を教わるとき、多くの人は「どのような手順で作業を進めるか」というプロセスの情報(手元の動きや順番)に意識を集中させがちです。しかし、手順を記憶して真似るだけでは、形にはなってもクオリティやスピードで大きな差が出てしまいます。

私が初めての身体作業を習うときに意識しているのは、「教える人の身体全体を丸ごと観察すること」です。手元の局所的な作業ももちろん、一歩引いて相手の全身にも目を向けます。

  • どんな姿勢で立ち(座り)、対象に対してどう身体を向けているか?
  • 使っている指の種類や指や手や腕の角度や向きはどうなっているか?
  • 力の入れどころと抜きどころ、動かすスピード感はどうか?

有名な慣用句に「木を見て森を見ず」がありますが、私流に言えば「葉っぱを見て、木を見て、森も見る」というイメージです。

  • 葉っぱ(ミクロ):手元の細かい作業、1つの部品、指先の微細な動き
  • 木(メゾ):作業の手順、部品同士の連結構造、手腕の連動
  • 森(マクロ):相手の身体全体の姿勢、機械全体のシステム

細かな力加減の微調整には多少の慣れが必要ですが、相手の身体の使い方をミクロからマクロまで一括で観察して自分の身体に落とし込むことで、どんな作業であっても初見で7割程度のクオリティで再現できるようになります。

■ おわりに:思考を止めず、観察から始めよう

テクノロジーが発達した現代では、分からないことがあればすぐにネットで検索したり、AIに答えを尋ねたりすることができます。

しかし、「自分の目と頭で観察し、仕組みや身体知を理解する」というプロセスを飛ばしてしまうと、真の応用力やトラブル対応力は育ちません。

「葉っぱを見て、木を見て、森も見る」——このプロセスは、単に作業を真似たり機械を直したりするだけでなく、「物事の本質を掴む」ためにも非常に適したアプローチだと感じています。
表面的な現象(葉っぱ)だけに囚われず、構造(木)と全体像(森)を行き来しながら観察することで、初めて問題の根本原因や仕組みが見えてくるからです。

私はこの観察習慣で、これからも現場の「葉っぱ・木・森」を見極める視点を大切にしながら、自発的に考え、成長できるモノづくり組織を築いていきたいと思います。

この記事をシェア